2019年09月30日

外注の形態と必要な能力


ある程度規模の大きなものを開発する様になれば、自社だけで開発するのではなく、外部のパワーを活用するのが普通だと思います。今回はそんな場合に必要な能力についてです。

外注に関連する用語


関連する用語が色々あるのでここでの使い方も含めて一通り説明したいと思います。まずここでは、自社(の社員)で仕事を行わず他社(の社員)に仕事を依頼する事をまとめて「外注」と呼んでいます。外注は形態的に大きく「派遣」と「委託」に分かれて、この両者では適用される法律が違います。
簡単に説明するとおよそ以下の様な違いです。

派遣

作業を指示する形態です。
ですから一般には自社に来てもらってメンバーの一員として一緒に働く事になります。いわゆる「派遣法」で規定されています。

委託

成果物を納入してもらう形態です。
ですから「こういうプログラムを作ってください」という依頼をして、「はい出来ました」といって納品してもらう形になります。一般には業務委託と言ったりしますが、実はこの言葉も正式な言葉ではありません。法律的には「請負」というものに該当します。委託と呼ぶ経緯は分かりませんが、製造業以外では請負以外にも法律上の形態が存在する様で、それらを全てまとめた概念として委託という言葉を使用しているようです。

それ以外の用語

それ以外にも「アウトソーシング」という言葉も良く聞くと思います。この言葉は多分正式な定義は無いとは思いますが、この言葉が使われ始めた時の個人的な印象としては、簡単に言うと「分業」という感じでした。つまり従来の委託はあくまで自分達のパワーが足りなくて仕事の一部を手伝ってもらうだけですが、アウトソーシングは外部の専門業者に丸々任せてしまうという印象でした。例が適切か分かりませんが例えば自社は作る事に専念するのでデザインする事は止めて専門の会社に一任するという感じです。バブル崩壊後の不況の中で、自社が専念するべき領域はどこなのかという命題を突き付けられた結果、台頭してきた言葉の様な気がします。

このアウトソーシングとそれ程離れていない時期に「オフショア(オフショアリング)」という言葉が使われ出した気がします。これは経理とかのスタッフ系の業務を丸ごと海外の会社でやってもらって経費を削減するという感じで理解していました。アウトソーシングが海外に展開された印象です。

いずれにせよこういう明確な定義が無い言葉は、なんとなく雰囲気で変化して行き、それぞれの業種で方言を使っていたりするのではないでしょうか。アウトソーシングを単に外注の意味として使っている場合もあるでしょうし、オフショアを単に海外という意味で使っている場合もあるかもしれません。

この記事での対象

この記事では外注に出す自分達側に必要な能力という視点から、「派遣」と「委託」と海外への委託である「海外委託」の三つについて述べます。簡単に言えば、同じ様に仕事を手伝ってもらうとしても、この順番で難しくなるという事です。

派遣


派遣はメンバーが増えるだけですから最もやり易い形態です。
組織の能力として必要な点は、なるべく能力の高い人に来てもらいたい訳ですから、突き詰めれば人事部の採用の能力になるかと思います。ただ、自分自身も経験したのは開発部門で面接して採用するという形だったので、開発として工夫をしました。自分の場合は専用の試験問題を作成しました。それを面接中に解いてもらいました。これの利点は自分が知りたい能力に特化して問題が作れるという事と、採用の時に毎回使用すると以前の人との比較が出来るという事です。

委託


派遣に比べるとかなりハードルが上がると思います。
まず、派遣では人の能力を判断しましたが、委託では業者(会社)の能力を判断する事になります。
それから先程説明した様に委託は基本的にINPUTを与えてOUTPUTを受け取るだけです。派遣の様にあれこれ指示を出しながら作業を進めるという事ができません。勿論適宜打ち合わせをして内容をすり合わせるという事はできますが、それにしてもリアルタイムという訳にはいきません。つまりINPUTの内容がいかに正確で、漏れが無く、曖昧さが無いかという事が求められます。一般にINPUTとして仕様書を渡しますが、普段社内で仕様書に対して「これってどういう意味ですか?」と表現に質問をされたり、「この場合ってどうなるんですか?」といった感じで場合分けが抜けていたりしたならば、委託をするのは苦労する可能性があります。社内で仕様書を渡しただけで、期待通りのものが出来上がってくるレベルだったとしても、委託の場合はそれまで共通の経験をしてきてないので誤解が生まれるような場合もあります。

それと設計の品質をなんらかの方法で担保する事も必要です。仕様通りに出来たかどうかはテスト結果を報告書で確認すればある程度分かりますし、こちらでも受け入れ検査をしますので判断はつきます。しかし中の作りが期待通りに出来たかどうかは分かりません。そもそも最後になって設計が期待通りじゃないと言われても困ります。

このように派遣と大きな違いがある委託に対して密かに行われるのが「偽装請負」です。つまり委託の契約なのに派遣してしまうという事です。これはブラックの始まりであり、明確な法律違反です。派遣するとその労働者は派遣先で組合の庇護もなく好き勝手にされる危険があります。ですから派遣法で様々な条件や義務を定めて慎重に扱われているのです。委託契約の場合はそれが無いにも関わらず派遣してしまう訳ですから問題です。

海外委託


委託に必要な能力は海外だと更に上がります。
もう二十年位前になりますが、自分の所属する組織で初めて海外に委託する事になりました。相手はインドの会社で6つのプロジェクトで仕事を発注したのですが、結局私のところ以外は全部失敗してしまって納品されたプログラムは捨てて日本で一から作り直す羽目になってしまいました。今思えばやりとりが英語だった上にインドだと時差の関係で電話等のリアルタイムなコミュニケーションも難しく、そもそも今まで国内の委託すらあまり経験が無かったので、なかなかハードルの高い取り組みでした。
更にそれから十年後位に中国への委託を経験しました。やりとりも日本語なのでインドの時と比べると随分楽だと思いましたが、それでも海外委託には特有の難しさがあると感じました。
それは大きくは以下の二つです。

INPUTの厳密さが更に必要

仕様に「電話番号入力」とあれば日本人ならば「数値かどうかの入力チェック」は当たり前のように付けてくれたりします。しかし海外ではそういう事はありません。入力チェックが必要ならばその旨記述する事は必須です。全ての挙動が細大漏らさず記述されていなければ期待通りには仕上がりません。「言われた通りに作った」と言われて終わりです。

文章によるコミュニケーションが必要

今ならばテレビ会議とかがありますが、それでも常時接続する訳にはいきません。時差があれば尚更です。そういう場合、やはりコミュニケーションの主な手段はメールになります。この時に、必要な事柄が全て述べられていて、曖昧さのない表現になっている必要があります。仕様書同様に網羅性や厳密性が必要だという事です。さもないと何度も何度もやりとりをする事になります。実際、一日中メールばかりする羽目になっている人もいました。こうなると本当に海外に委託した方が安いのか怪しくなってきます。
チャットやSNSみたいなメッセージ系ならば効率が良いと思う人が居るかもしれません。しかし、それは一回の文章で必要な事を全て書き切る能力がないという事の裏返しです。何度もやり取りをする事が前提になっている訳です。確かにメールで何度もやり取りをする事に比べれば多少は良いかもしれませんが、効率が悪い事には変わりません。

外注しなければ関係無いか?


このように派遣、委託、海外委託と比べれば海外委託が一番難しい事になりますが、実は海外委託に必要な能力は普段から必要な能力です。
仕様書に細大漏らさず全ての挙動が書かれているのは当たり前の事です。書かれていない事があればどんな挙動にされてしまうか分かりません。目の前に居ると気が付いた人は尋ねてくれるのでうまく補正されるというだけです。
コミュニケーションもそうです。網羅性や厳密性が無ければ、いわゆるコミュニケーションロスが発生します。少々無駄が発生するレベルならばいいですが、酷い時はリワークに繋がりかねません。そういう品質の低下や無駄がまた計画の遅れに繋がる事になります。

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posted by 善 at 19:10 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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